海野けい子先生 |
「お茶の効能完全ガイド」側からの質問に先生にご回答いただくという形でお話を伺いました。それでは以下に質問と回答を載せてゆきます。
海野先生とのQ&A
①お茶のどういう成分が脳の老化を抑えているのですか?
老化の一因として、活性酸素による酸化傷害の蓄積が重要であると考えられています。
お茶の中の苦味や渋味の成分であるカテキンは、強い抗酸化作用を持っていますので、活性酸素を消去し酸化傷害の蓄積を抑えることにより、老化の進行を抑えることができると考えられています。
また、長期にわたるストレスの蓄積も老化を促進します。
緑茶に含まれている旨み成分のテアニンは、ストレスを軽減する作用がありますので、テアニンはストレスの蓄積に起因する老化の進行を抑えることができると考えられます。
②お茶を飲むことで、認知症やアルツハイマーにも一定の効果があると考えられているのは何故ですか?
認知症やアルツハイマー病は高齢になるほど患者数が増加することから、最も重要な危険因子は「加齢」です。
また、「老化」は更にそのリスク(危険度)を高める促進因子です。 「加齢」とは、生まれてからの時間経過のことですので、例えば、60歳の人は皆同じ60歳です。
一方「老化」は、同じ60歳でも若々しい方もいれば、老けている方もいるように、必ずしも年齢とは一致しません。
老化は遺伝的素因に加え、生活環境や食生活,ストレス、生活習慣など様々な要因によって大きく変化します。
「加齢」を止めることはできませんが、「老化」を遅らせることは可能です。 緑茶を飲むことで、老化の進行をある程度抑制できると考えられることから、認知症やアルツハイマー病の予防においても効果があると思われます。
③脳の老化を抑える等の効果を期待してお茶を飲む場合、どれくらいの量や頻度で飲むのが効果的ですか?
これまでに実験動物で得られた結果から、ヒトの場合に効果が期待される量を推計してみると、煎茶として1日あたり2~3杯から7~8杯程度ではないかと考えられます。
高齢者を対象とした調査において、緑茶を1日2杯以上飲んでいる高齢者では認知症のリスクが低下することが報告されていますので(栗山ら、2006年)、1日数杯の緑茶を飲むことは認知症予防において、良い効果が期待されると考えられます。 ただし、人によって食生活や生活習慣は大きく異なることから、必要量も異なることは十分考えられます。
緑茶として摂取したカテキンは、消化管から一部吸収され更にその一部が血液中に移行し、身体の各組織に運ばれていきます。
血液中のカテキンは、緑茶を飲んだ1~2時間後に最も高くなり、その後徐々に低下して12時間後にはほとんど消失すると報告されています(仲川ら,1997年)。
一方、身体の中では活性酸素は常に発生していますので、酸化傷害を防ぐには、カテキンが血液中に継続して維持されていた方が効果的だと考えられます。このようなことから、緑茶を一日数回、毎食後や仕事中などに、こまめに飲むことが効果的だと考えられます。
④最も効果的なお茶の淹れ方はどういったものでしょうか?
カテキンは緑茶中にたくさん含まれていますので、市販のペットボトルの緑茶でも、普通に淹れていただいた煎茶でも、それなりにカテキンの効果が期待できると考えられます。
テアニンは抹茶や玉露、上級煎茶に多く含まれていますが、一般煎茶には少し、番茶にはごく僅かしか含まれていません。
また、茶葉に含まれるカテキンやカフェインは熱湯で溶出されやすく、これらはテアニンのストレス抑制効果を打ち消す作用があります。そこで、カテキンやカフェインの溶出を抑え、テアニンが溶出される割合を相対的に高めるような淹れ方の工夫が必要だと考えられます。低めの温湯あるいは水などで溶出することは、そのような方法の一つです。
お茶として飲んだ場合に、ストレス抑制効果が期待できるテアニンとカテキン、カフェインの割合については、現在検討中です。
⑤緑茶以外のお茶で老化防止効果が期待できるお茶にはどんなものがありますか?
緑茶以外のお茶として紅茶やウーロン茶に関する研究も行われていますが、効果の有無や作用成分などについて、まだ一致した見解や十分な検討には至っていません。
終わりに
お茶の老化防止効果について、専門的な視点から、かつ私たちにも分かるように解説いただきました。お茶の量や淹れ方など、我々お茶愛好家が普通の茶飲時に参考になるような実践的な情報もいただくことができました。海野先生、お忙しい中快く回答をくださりありがとうございました。